デジタル領域で幅広くクリエイティブ制作をしている、株式会社マスクマンの中西様(以下敬称略)と、映像制作を主軸としたエレファントストーンのプロデューサー比嘉、ディレクター奥野を交えての対談です。
弊社がマスクマン様と初めて一緒にお仕事をさせていただいたのは、株式会社ノーリツ様の温水給湯器のPV制作でした。それに続いての、同社のガスコンロのPV制作。
この二つのプロモーション制作は、マスクマン様が主体となり、Webサイト制作、コピーライティングやタイトルデザイン制作、Webサイト内のイメージ写真の撮影など多くのクリエイターの力が組み合わさった制作でした。その中で、弊社も映像面でのクリエイティブを担当させていただきました。
今回は、制作全体のクリエイティブの質を高めるために意識されていることについて、三名にガスコンロのPV制作を振り返りながらお話を伺いました。
「真摯な姿勢に共感し、安心できた」
温水給湯器のPV制作に続き、ガスコンロのPV制作を通じてお互いに抱いている印象を教えてください。
奥野:中西さんは思考の回転が本当に早い方なんです。展開も早くて、色々なことが直ぐに決まっていく感じ。マスクマンさんとのお仕事は、お互いの超スピードのラリーでサクサク見通しが決まっていくので、停止する時間がなく、クリエイティブに対し真っ直ぐ向かい合うことができるなと感じます。
比嘉:そうですね。早いっていうのはクライアントにとっても真摯なことだと思うんです。この段階で論じたいっていう目標があるなかで、それを達成するためのスピード感だったり、クリエイティブをしっかり作るための展開の速さだったり。先のことを見据えて早く展開していくスタンスが、かなり鮮明に刻まれています。中西さんは話しているとフランクな印象がありますが、お客様の前に立った時の責任者としての振る舞いもとても尊敬してます。
奥野:本作は温水給湯器のPV制作に続いての制作でしたが、僕たちの印象ってどうでしたか?
中西:すごくシンプルな言い方になってしまうのですが、エレファントストーンさんは本当に印象が良かったっていうのがあります。最初に給湯器のPV制作のお仕事をさせていただいて、相性をみて「大丈夫だ、任せられる」と思いましたね。
一度お仕事させていただいたら、課題に対して「このぐらいの熱意で返していただけるだろうな、あのセンスを持ってきていただけるだろうな」っていうのを感じられるんですよね。その最初のお仕事の印象もあったので、今回もお願いしようっていう風になりました。
それぞれ実績があったとしても上手くいかないことってあるじゃないですか。なので一番最初にチームを組む時はまず相性をみているんですけど、その点安心して任せられるという印象です。
具体的にどのあたりに熱量を感じたのでしょうか?
中西:皆さんのあらゆる対応一つずつだと思います。あまり人との付き合いで、「このきっかけがあったからいい関係になった」ってことはないと思うんですよね。ちゃんと受け答えしてくれるか、社会人としてしっかりされてる方かっていうのはすごく見ています。
エレファントストーンの皆さんは、ちゃんと目を見て話してくださるなとか、初回の打ち合わせにアジェンダ持ってきてくださったなという印象がありました。そういった立ち居振る舞いがすごくちゃんとしていたので、その一つ一つに熱量を感じていました。
プロモーションコンセプト「あたためるのは、美味しさと幸せ」の起点
今回のプロモーション制作の肝となる、コンセプト「あたためるのは、美味しさと幸せ」をどのように導き出したのでしょうか?
中西:Webサイトの構成資料を作る時って、キャッチーコピーとかテキストが入る箇所に、ダミーで文字を入れておく場合が多いと思うんです。その点、うちは構成資料だとしても密に作りこむんですよね。「仮でもいいから、サイトの雰囲気がわかるようにタイトルとかコピーとかは入れるように」って。そうしないとお客様にもサイト全体の雰囲気が伝わりづらいじゃないですか。そうやって仕事をする中で、構成資料に仮で入れていたコピーがそのまま採用されることも増えてきたんです。
この「あたためるのは、美味しさと幸せ」も、弊社のチーフディレクター高須が最初の構成資料に仮で入れてたコピーでした。他にも色々案は出していたんですけど、最終的にこれが一番良くない?っていう話になりましたね。高須の手柄ですね。
比嘉:このコンセプトを提案する場に僕らも立ち会ってたんですよ。他にもいくつかコピーがあったと思うんですけど、「絶対これが一番いいでしょ!」っていうのが選ばれたなっていうのがあってすごい記憶に残ってます。
「僕らが作っているのは“作品”ではないですよね」
コンセプトが決まった段階で、サイトや映像の具体的な雰囲気は決まっていったのでしょうか?
中西:これは映像制作の手前の話になるんですけど、ノーリツ様との認識合わせのために、ペルソナを立てるワークショップもやったんですよ。そのワークショップの中で、プロモーションの方向性は「ちょっと上の暮らし」を目指すことになっていきました。
ワークショップを通じて、目指したい雰囲気はだいぶ固まっていました。ガスコンロを新しくするタイミングって、家を新しく建てる時だったり、建て替える時だったり、暮らしを一新する時なんですよね。
最初にガスコンロに火を付けたあの瞬間、新しい場所で新しい生活が始まったっていうイメージは最初から考えていました。もちろん、映像としても商品のクローズアップから始まるのが定石かもしれません。それでもやっぱり、スイッチをオンにした時に「新しい暮らしに火が灯る」っていうのを最初からイメージしてましたね。
奥野:途中でそのイメージを伝えていただいて、BGMとかも含めて、具体的な演出は早い段階で決まっていったような気がしますね。企画の内容も、はじめは4人家族のそれぞれの視点からストーリーになるオムニバス形式※で提案していたんです。
そこから、ノーリツ様と中西さんとお話を重ねて、「新しく生活家電を買い換える際に限らず、比較的多くの家庭でガスコンロのメインユーザーはお母さんだよね」となりました。でも、現代的には家族でキッチンに立つ時間もどんどん増えていると思うので、お母さんを主人公にしつつ家族も関わっていきたいね、という方向性に進んでいきましたね。
※オムニバス形式:いくつかの独立した短編を集め、全体として一つのまとまりになる構成
中西:話し合いの中で、お互いにちょっとずつ被せ合いながらじゃないですけど、しっかり僕の話を聞いていただけたっていうのはすごい感じましたね。クリエイターの中には、ものすごいこだわりを持っていて気難しい方もいらっしゃるじゃないですか。その点、エレファントストーンさんは柔軟に対応していただいたと思います。
僕らの仕事って“作品”って言い方をしますけど、自分の作品を作っているわけじゃないんです。お客様が欲しいものを作るのが僕らの仕事で、結果的にそれが作品と言われるだけ。自分たちは誇りを持って作れるものだけど、決して自分たちが作りたいものを作ってるわけではないんです。
奥野:その発想すごくわかります。僕も自分の作りたいものを作るというよりかは、お客様にオーダーされたものを作っている中で、自分がどういったアウトプットにしていくか誇りを持って提案する、ということしか考えてないですね。原点は必ずお客様にあって、お話しされたことに対して、これが一番いいんじゃないかという回答を出してるに過ぎないんですよね。
中西:多くのパターンがそうですもんね。たまに「あなたが良いと思うものを頂戴よ」っていうのもあるかもしれない。その時は答えを用意しないといけないですけど、殆どの場合はなんらかの課題を持って依頼される訳で、その時に自分がやりたいものっていうことではないですよね。
クリエイティブ制作は一人ではできない
今回のプロモーション制作では、お客様、プロモーション全体の統括をされた中西さん、そして映像制作をした奥野さん。それぞれの意見があったと思うのですが、それをどのように踏襲していったのでしょうか?
中西:それに関しては、僕たちマスクマンサイドの役割かなと思います。Webサイト内の映像コンテンツを作るにあたって、具体的な映像イメージはあったとしても、僕たちは映像を撮れません。だからエレファントストーンさんのような信頼できる会社さんにお任せしているんです。じゃあ映像を作る時に僕たちがいる意味はなんなのかというと、それぞれの意見をハンドリングするためなんです。
エレファントストーンさんのアウトプットの良さっていうのがちゃんとあると思うんです。その良さを出しつつ、最終的なアウトプットの質を高めるためにも、ノーリツ様やエレファントストーンさんからのアイデアに対して、自分なりに判断するようにしてます。
奥野:お客様に対しても僕らに対しても、制作の中で中西さんが上手く全体のガイドやハンドリングしてくださっているのは感じていました。例えば、役者さんが話すセリフの部分で、家族の温度が少し高すぎるなど、“温度”という言葉でフィードバックを受けることがあったんです。家族感を全面的に出して、あったかい家族の雰囲気を描くのではなく、それよりかは少し落ち着いた感じを目指していくというか。目指すイメージに対するフィードバックが的確だったので、僕としてもシーンの組み立てがしやすかったというのがありますね。
中西:制作をお任せしている皆さんには、この映像の演出や撮ることだけを考えていただきたいと思っているんです。それ以外のことにあまり手間取らせたくないというか。「色々な意見を入れて困惑させないようにするんで演出に集中してください」っていうのが、僕らの役目かなと思います。
自分はお客様のふわっとした要望を具体化する翻訳者だと思ってて、その具体化は僕一人でできるじゃないですか。だから、ノーリツ様と僕らマスクマンとエレファントストーンさんの仕事は、はじめにオーダーをする人、お客様の要望を具体化する人、その具体化した内容を形に落としていく人。三位一体じゃないですけど、そうやって作っていくものだと思います。
その中で、一心同体となってお客様の要望を具現化するのが、僕らとエレファントストーンさんなんです。そしてオーダーしたお客様に対して、エレファントストーンさんの分まで「いい感じに作りますんで安心してください」って作品の質について翻訳するのが、自分の役目かなと思います。
奥野:色々と調整をして頂いていたこともすごく感じました。今回、全体のプロデューサーとクリエイティブディレクターを中西さんがされていたんですけど、調整していただいていたことが、制作が進んでいく中で安心できる要因でもありました。
演出の立場としては、まさに一緒に作り上げていったという感じで、しっかり役割分担していたんですよね。オーバータスクになると、どこかで摩擦が起きたり、間に合わない部分が出てきたりっていうのがあるんですけど、今回はそれが全くなくて、本当にやりやすかったです。
中西:本当は自分でWebサイト作って、映像も作って「いい映像が撮れました!よくないですか?」「いいですね!」ってできれば楽なんですけどね。なかなかそうはいかないです(笑)
お互いが考えるベストアサインとは
比嘉:普段お話ししていてもそうですが、中西さんはじめ、マスクマンの皆さんはユーモアがすごいんですよね。打ち合わせで笑いが起きなかったことがなかったです。
奥野:僕もすごい感じます(笑)お話の仕方も含めて丸っとユーモアに溢れているんですよね。
中西:“笑い”ってところで言うと、打ち合わせだけじゃなくて進行中や提案のアウトプットにおいても、「一笑(いっしょう)を得たい」と思っているんです。笑いって爆笑からクスクス、ニコニコとか、いろんな種類があると思うんですけど、お客さんからの一笑いが欲しいんです。社員にも、「一笑いを入れなきゃいけないよ」っていうのは伝えてます。
例えばお客様に企画書を出した瞬間に、「こんなにアイデア考えていただいたんですか」「すごい一生懸命考えてくださったんですね」っていい表情になってもらうぐらいやらないと、お客様がお金を払っている対価に見合わないと思うんですよね。アイデアに対する自分の熱量をどれだけ伝えられるかが、お客様の感情を動かすためには大事だと思うんです。それが自分達では「一笑を得る」っていうことだと思います。
奥野:今回は、中西さんがそういう形でノーリツ様との雰囲気を作ってくださっていましたね。僕は撮影現場の雰囲気がピリつくのが好きじゃないんです。ストレスがある現場だとスタッフ全員がピリピリして、結果的に誰かが遠慮してしまったり、緊張してしまったりして、ベストなパフォーマンスができなくなってしまうことがあると思っていて。
それは映像制作をはじめた時から感じていたので、笑いが絶えないとか、ユーモアがあるとか、和やかな現場にすることを意識しています。カメラマンやキャストをアサインする時も、スキルは勿論ですが、一緒にやっていて楽しい制作体制を作れることや、お客様の雰囲気にも合いそうかも考えながら決めています。だからこそ、中西さんが明るい雰囲気を作ってくださっていたので、僕も明るい人たちをアサインしやすかったです。
中西:お客様も依頼する前に実績や制作スタイルなどをしっかり選んだ上で、依頼するべきだと僕は思ってます。現場の話に戻すと、騒がしかろうが、笑っていようが、依頼先の制作者が選んだメンバーを信頼してほしいってことです。今回の場合だと、自分が選び抜いてエレファントストーンさんに頼んでいるので、ノーリツ様にも自信を持ってお勧めできるんです。極端な話、現場がめちゃくちゃで、作品もよくなかったらプロデューサーとしての僕の責任です。
そのように上手く進まないことがあったらお客様に対しても申し訳ないし、アサインする皆さんに対しても申し訳ないと思うので、お願いする前に丁寧に実績を拝見したり、会話させていただいたりしています。「この人たちなら大丈夫」って思ってベストなアサインをしているので、こっちが現場で焦ることじゃないんですよ。アサインする方たちにも一番得意なテイストとか、のれる状態とかってあるじゃないですか。そこをちゃんと見極めてチームに入っていただく。チームを組んだ段階で8割は仕事が終わっている感覚です。
奥野:僕もアサインの段階で、制作進行の効率や最終的なアウトプットの質は全て決まっているというのはすごく感じていますね。
撮影の時に、想定以上に上手く撮れたとか、凄い画が撮れたっていう奇跡が起きることってない気がするんです。なんなら自分はそれは勘定に入れたくなくて。結局撮影までの準備をいかに丁寧にできるか、自分が表現したいことをしっかり実現してくれるキャストやカメラマンのアサインをできるかで、成果物や撮れ高が決まっていると考えています。現場では、予定外のことや問題に柔軟に対応するだけで、基本撮影は準備通りに真摯に進めていくことでしかないと思います。そう考えた時に、撮影準備やアサインでアウトプットの質は決まると思うので、メンバー選びはすごく心掛けていますね。
比嘉:撮影一つとってもベストアサインがあるってこと?
奥野:そうですね。例えば、このカメラマンだったらこういった雰囲気でしっかり撮ってくれるかなとか、この助監督さんなら今回の役者さんに合っていて、上手く進行してくれるかなとか、それぞれの制作に合わせてアサインしています。
今回の制作を振り返って感じたこと
最初に思い描いていたプロモーションの雰囲気があったと思うのですが、最終的にどのようなアウトプットになったと感じますか?
中西:プロモーション全体をみて、複数人で作ったとは思えない仕上がりになったと思います。Webサイト、映像、写真など役割分担していると、どうしても意見が行ったり来たりしてしまって、一つにした時にチグハグに見えてしまう場合もあると思うんです。ですが今回は、しっかり世界観が保たれていて、誰かが一人で作ったように見えます。
もちろん僕の方で、エレファントストーンさんの映像、弊社のデザインやコピー、そしてカメラマン五十嵐君の写真を、一個にまとめた時に上手くいくように調整はしていました。でもこれは僕だけの力じゃなくて、メンバー同士でもちゃんと会話して、呼吸を合わせていきながら作れたからだと思います。
奥野:僕も普段、Web制作の会社さんだったり写真撮影の方だったり、誰かと一緒に仕事することが多いのですが、今回もスチールを担当された五十嵐絢也さん(http://junyaigarashi.com)の写真の撮れ高や世界観、アングルにそれとなく協調するというか一緒に歩く様な意識を頭の片隅に置いて、撮影していました。
誰かと制作する中で、テイストとかは比較的寄り添える方なので、細かいニュアンスのコミュニケーションを取り合うというよりは、いただいたロケハンの写真や雰囲気にうまく映像を合わせていくっていうのはありますね。中西さんはじめ、要所要所でアサインされていた方々も含め、みんなでそれとなく察して、周りを見ながら調整するのが上手くいって、撮影までかなり短期間の中でもスムーズに進めることができたのかなって思います。
中西:ジャムセッションしてる感じですよね。お互いを見ながら上手く合わせていくっていう。
奥野:今回の制作では特にそんな感じでした。多分僕が一番若造なので、中西さんがアサインされた方達にやばい、ついていかないといけないっていう、いい意味でプレッシャーみたいなのは少しありましたね。その中でもすごく和やかな雰囲気っていうのもあったので、そこは楽しみながらできたんじゃないかなと思います。誰一人ストレスを感じずにいい制作ができたと感じています。
比嘉:マスクマンさんと力を合わせたからこそできた、映像のアウトプットってどんなところがポイントだったと思う?
奥野:やっぱり一番最初に設定していただいたコンセプトが凄くしっかりしていて、そこから見えてくる映像やストーリーは自分の中でも考えやすかったです。それに、考えやすいだけじゃなくて、お互いが最終成果物への認識をすり合わせるコミュニケーションもしっかりあったということが一番重要だったのかなと思います。
中西:ありがとうございます。今回のはいいアウトプットになったと思います。
いわゆる“ガス”っていうものをモチーフにしたら、従来だとビジュアルも“ほんわかとあったかい”といった表現が多いと思うんですよね。そこから“ちょっと上の暮らし”みたいな新しいビジュアルや表現でブランディングしていったので、本当に第一歩になったのではないでしょうか。ノーリツ様にとっては間違いなく転換期というか、新しいブランディングの起点になったと思います。
ノーリツ様からの反響はいかがでしたか?
中西:社内でも反響はだいぶあるみたいです。担当者の方にも嬉しいメッセージをいただきましたし、映像も大好きだと思います。
比嘉:映像の再生回数も154万回突破してますもんね。すごいです。
中西:映像のクオリティもテレビCMに負けず劣らずの出来栄えでした。僕たちが作りたいものにもなったし、ノーリツさんが作りたかったものにもなったんだろうなって思います。ガスコンロのプロモーション制作にあたって、とても重要なコンテンツである映像を作っていただいたことに対する信頼感っていうのは、本当に何にも変えられないですよ。
比嘉・奥野:感無量です。。
今回、ノーリツ様のガスコンロプロモーションの制作を軸に、お互いの制作スタンスについてお話いただきました。お互いができることを最大限に引き出し合うことで、お客様にとっても私たちにとっても、素晴らしいアウトプットに繋げていくことができたのではないでしょうか。これからもマスクマン様とともに、お客様に対して最高なアウトプットを提供するお仕事をしていきたいですね。
PROJECT
MEMBER
制作メンバー